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「 ニセモノ機関士大暴走 −佐渡の巻−」


監督:中野 恵之
脚本:田口 成光

主なゲスト
ナツオ・・・住吉 正博
窯元のおじいさん・・・三井 弘次
ハルコ・・・林 靖子


K-100は佐渡尖閣湾(せんかくわん)にかかる陸橋を走っていた。
しかし次の瞬間、走るK-100の後ろを「泥棒!」と叫んで紋太が追いかけていた。
操縦席に座り振り返って笑う見知らぬ青年。
そして紋太は力尽きその場にへたり込んでしまう。
という夢を見て飛び起きる紋太。しっかりその場にあるK-100を見て安心するが、今度寝る時は何か対策を考えようと誓うのだった。

その頃アキオ(秋男?)とその友達は、アキオの兄のナツオ(夏男?)がたらい船を操るのを見ながらK-100が来るのを待っていた。ナツオは元汽車の運転手で、デゴイチ(D-51)にも乗った事があると言う割に海の上でたらい船に悪戦苦闘している。
そんな姿に「元運転手なんて嘘だと」友達が笑うのを聞き怒るアキオ。
それを聞きつけナツオもやって来て怒るが「だったらK-100の運転できるんだろう」と言う友達に「佐渡には鉄道が無いのにどうやって汽車がくるんだ」と言ってるそばから目の前にK-100の姿が!
それを見てわざとらしく腹痛を訴えそそくさと逃げ出すナツオだった。

そしてK-100の後を追いかけて走る少年達、しかしなぜかK-100は結構なスピードで止まる事もせず走り抜けていき最後に一人追いかけていたのはアキオ一人だった。
その姿に気が付きK-100を止める紋太。自分の一家はSL一家だから自分も一度K-100を運転したいというアキオ。でもK-100は紋太さんの言う事しか聞かないと心配しているアキオに「こうすれば平気だ」と紋太は被っていた帽子でヘッドライトを隠して
「こうすれば誰の言う事も聞くようになるんじゃ」


そしてアキオを乗せて町を走っていると、はずみでおじいさんとぶつかりそうになってしまう。
紋太を叱りつけるおじいさん、手持ちの風呂敷を開けて中の壺の無事を確認してほっとしていた。
おじいさんは佐渡の相川(あいかわ)に昔から伝わる無名異焼(むみょういやき)の窯元で。後継者もいないので今ではこの焼き物は貴重品との事だった。

その晩、アキオのうちに泊まる紋太。ナツオは機関士と言っても汽車乗る前に鉄道はなくなったので、汽車を運転した事はないとアキオの姉のハルコ(春子?)に聞かされる。そこに帰ってくるナツオの顔は夢で見たK-100を乗り逃げした青年の顔だった。なんか嫌〜な感じがする紋太。
そこでアキオがK-100を運転したとナツオに自慢。そしてナツオにK-100を運転できる秘密を教えると約束するアキオだった。

翌朝、K-100と自分の足を紐で縛って寝ていた紋太。(これが昼間言っていた対策か!?)
そうとは知らずにナツオがK-100のライトに帽子を被せ走らせてしまったから大変!そのまま引きずられて怪我をしてしまう。

K-100を追うアキオ、一方ナツオは止め方を知らない物だから相川の町を暴走。そんなK-100を見つけて後を追うノブちゃん!
やがてK-100は、昨日の窯元のこね上げて焼く前に乾かしている焼き物の棚に激突して停車。しかし焼き物は粉々になってしまう。
怒る窯元のおじいさん、しかしナツオは「あ、すんません」としれっとしている。
それを聞きおじいさんは「なんだそりゃ!全然あやまっとる態度じゃない!」と激怒!
「いくら自分でこの窯は閉まるけど、壊れた焼き物はみんな注文されて作った物なので今までの信用が台無しじゃないか」

そしてノブちゃんはK-100とナツオが償いをするまで、この相川から一歩もださんと強行の構えらしいと病院の紋太に報告。
それを聞きすっかりしょげるアキオとハルコ。
実はナツオは、機関士になる前に鉄道がつぶれたのでなく、性格上機関士になるまでもたずにクビになっていて、それですっかり自信をなくしてしまったと言う事だった。それを聞き紋太は、このままナツオがK-100と共にちゃんと償いをすればそれが自信に繋がるのではないかと様子を見る事にする。

そしてノブちゃんとナツオはK-100で、元金山に土を採りに行く事に。無名異焼の無名異とは金山の跡地から取れる土を指すらしい。しかし行く前にナツオは水筒代わりになる物が欲しいと、おじいさんが大事にしていた壺を無断で持ち出してしまった!
そして相川金山(跡地)で土を掘り出すナツオとノブちゃん。そこでナツオは水を飲み干した後の壺を放り出して割ってしまった!

その頃、窯元ではナツオが壺を盗んだと大騒ぎになっていた。
しかしナツオが帰ってきたので濡れ衣は晴れるかと思いきや、その壺を割ったことが解り、事はもっと重大事に!
それでもナツオは自分が作るからと平気な顔。
「わしが40年かかって作った壺を、素人のお前に作れる訳がない!」
「大丈夫なんとかなるから」とナツオはろくろの所に行くが使い方が解らないと一同をあきれさせるのだった。

窯元「ありゃ直らねぇよ」

しかし、いざろくろを使ってみると窯元が感心する程意外と筋がいい。ナツオも今までにない情熱を持ち作業にいそしみ窯元が「こりゃいいわ」と感心する程の物を作るが気に入らないとつぶしてしまう。それを見て思わず窯元が叫んだ「惜しいなぁ!」

さていよいよ焼き上がりの日、紋太はじめ集まった面々に窯元は言う。
「いや〜素晴らしい、実に素晴らしい。わしが40年かかってやった事を、あの男はね、わずか3日でやりとげようとしてるんだからね」
それを聞き喜ぶハルコ。
そんな中、ナツオが窯から焼き上がった壺を持って出てきた。
その仕上がりに感嘆する窯元、「いや〜負けた。あんた天才じゃよ」
そして窯元はナツオに窯の後を次いでくれるように頼む。とりあえずはもっと人間ができるまではあくまでも弟子扱いだが、という話ににっこり笑って「いいよ、やってみるよ」と答えるナツオ。今までの情けない顔とは別人のような人として自信を取り戻した顔だった。

そしてアキオ、ナツオ、ハルコ、窯元に見送られて出発する紋太。
海岸沿いを走るその姿がストップモーションになって
(つづく)


今回は盛り沢山でテンポがよく、内容的にも前回のやりきれなさを吹っ飛ばすような軽快な作品で、K-100も勝手な振る舞いはせず、ちょっと雰囲気が前半に戻ったような好編でした。(これはやはり前半を通して助監督を務めていた中野監督の力でしょうか?)
ノブちゃんは本州においてけぼりかと思いましたがいきなり登場して紋太の代わりに大活躍でした。
見所はやはり窯元の三井浩次氏とナツオ役の住吉正博氏の掛け合いです。
しかしナツオは何故にパンを首からぶら下げているのでしょうか?

ナツオ役の住吉正博氏ですが、この後「がんばれロボコン」でロボコンが大野しげひさ氏が演じた大山新太郎家の後に下宿する小川家のお父さん(小川太郎)役の方で、大野しげひさ氏とは夢の共演でした。この時はまさかそんな事になるとは夢にも思っていなかった事でしょう。

窯元役の三井浩次氏日本映画黄金期からのベテランで時代劇から現代劇といろんな物に出演していらっしゃいました。

今回冒頭に出てきた尖閣湾は、昭和25年には国定公園に編入。昭和29年、菊田一夫原作映画『君の名は』のロケ地として全国に知られ、昭和46年、海中公園に指定されるという日本有数の海岸美を誇る所です。

さて次回、富山県をお楽しみに!

(2002.11/16up)


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