石橋正彦裏話
ペテン師石橋こと、杜沢泰文(現・杜澤たいぶん)様が掲示板に書いてくれている
裏話をお借りしている写真と共に再掲載しています。
 
石橋正彦裏話その9 投稿日:2008年 2月12日(火)20時08分36秒

出演していた当時の自前のカフスボタンが出てきた事はお話しましたね。その他自前のネクタイ等を探していたのですが…。この前京都の撮影が終わって帰って来た時、唐突に女房が言うのです。

「火事、火事!」
?なに?
「ほら、火事よ!」
??何処が?
「バカね。永福町で火事だったでしょ!」

ああ!思い出しました!九州ロケが終わって帰って来たのが確か12月26・7日頃でした。次の日確か「大野先輩」から電話があり、編集の仕上げ作業を六本木でやっているから見に来ないかと、その後スタッフの方と忘年会をやりましょうという事でした。
長く地方にいると東京のネオンが恋しくなるもので、呼んでくれた事が嬉しくて直ぐ行きました。

初めて見る編集作業。大きな画面に映し出される自分の姿。それを見ながら編集者の方も、そして青野監督も「バカだね、正彦は!」って笑ってくれています。
へエー編集ってこんな事をして私のつたない芝居も盛り上げてくれているんだ!。もう嬉しくって嬉しくて有頂天でした。そしてその後初めてお会いした編集の方々も含め忘年会をしました。

久しぶりに東京で飲むお酒のなんと美味しいことか!次の沖縄行きも決まっている。ああ、そして明日からはお休み!久しぶりにゆっくりするぞぉ!
「すいませんちょっとトイレに」・・・
トイレから帰る時、何か気になって自分の部屋に電話したんです。勿論誰もいない部屋にですよ…。
するとです、誰もいない筈の部屋の電話がつながり「もしもし」という男の声!で電話に出た人がいるんです!

49話、竹下景子さんと。

「もしもし、あんた誰?」
「もしもし、“もりさわ”さんですか?」
「なに!」
「もりさわ」
「“もりさわ”じゃないよ“とざわ”だよ」
「ああ、“もりさわ”じゃなくて“とざわ”さんですか?」
「だから何?あんた誰?」
「私、東京消防庁のものです」
「何、東京消防庁?」
「はい、実はお宅の部屋から出火致しまして、今どちらにいらっしゃいますか?」
「ろ・六本木」
「そうですか、直ぐお戻り下さいませんか」
「は・はい…」

トイレから帰った私が「すいません、部屋が火事になったみたいなので・・・すいません直ぐ帰る様にと言われまして」「(皆さん)????火事?」

タクシーで急いで帰るとアパートの前に大家さんが居て「あなたの部屋から火が出たのよ!」「えぇ…!」
「東京消防庁のものですが、出かけた時は部屋はどんなでしたか?」
「えぇ、どんなって…普通です…」

後になって解ったのですが「杉並連続放火事件」の犯人が事もあろうか貧乏役者の部屋に入り込んで物色し、その痕跡を残さない為に火を点けたんです。
ロケから帰ったばかりでロケバックも其の侭。自前のネクタイ・ワイシャツがロケバックの中に。こともあろうか火を点けた場所にわざわざロケバック持って行って、つい立の様にして、そこに紙など燃えやすい物を挟み込んだ訳です。ですからロケバックは見る影もなく…

同じく49話、キンジョウテツオ君役の紺野秀樹さんと。

幸い自前のコートはスーツと一緒にスタッフに預けていたのと、サングラスは掛けて行ったので無事でした。カフスはケースに入っていたので何とか難を逃れた訳です。
沖縄ロケ出発が確か1月の5日か6日でしたから、それまでの間、警察の事情聴取、消防署の事情聴取、被災証明の届出。幸い3畳間が焼けなかったのでそこに寝て、沖縄ロケの台本3本持って悲惨な正月になってしまった訳なのです。

つまり、その火事の時、ロケバックに入っていたネクタイは…

杜澤たいぶん。