昭和48年(1973年)3月20日 読売新聞より
少年向けドラマ「走れ!ケー100」
TBSテレビ系で来月13日から登場
日本縦断、全編ロケの意欲作
○キャプション

鹿児島・桜島を背景に走る「K100」乗っているのは大野しげひさ
『老人の願いにこたえ機関車を運ぶ』
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 TBSテレビ系では四月十三日からCAL製作による「走れ!ケー100」(金曜午後7・30)をスタートさせる。いわば機関車の“K100”が主役のドラマで、このK100を九州の鹿児島から、北海道の夕張まで運ぶ事によって、地方色や人情味豊かな旅を展開させていこうというもの。少年向けドラマの少ない今日、少年の夢を託して、日本縦断、全編ロケーションで製作しようという意欲作だ。

 物語の発端は鹿児島のスクラップ工場。工場の息子が赤さびだらけの蒸気機関車を発見、何とか動かしてみようと試み、近くのSLマニアの青年(大野しげひさ)の手助けも得て、修理に成功した。これが新聞記事になったところ、北海道から手紙が来た。「その機関車は、かつて夕張の鉱山でトロッコを引いたり、鉱山の人々の足にもなって親しまれていたもので、これを運転していた老人が、このK100を死ぬまでにぜひ一目見たいと言っている」という、その老人の孫からのものだった。

 この老人と少年の願いをぜひかなえてやりたいと、青年たちはK100の車輪をタイヤにつけかえ、何と鹿児島から北海道まで運ぼうと決心した。しかしその前途にはさまざまな困難が……。

 このほど鹿児島市を皮切りにクランクイン。現在九州各地でロケが行われているが、CALの増田弥寿邦プロデューサーは「子どものロマンを託した映画の“チキチキバンバン”風の夢いっぱいの機関車がこのK100です」という。

 K100は実在の鉱山機関車KE100をモデルに作られた。土台はカナダ製の水陸両用自動車アンフィキャットを使い、その上部にプラスチック製の車体を乗せた特注品。六個のゴムタイヤがはめられ、時速四十キロで自走でき、川や湖も渡る。

 さらにこのK100は多少擬人性も持たせ、誰かがいたずらで蹴飛ばしたら、自ら汽笛を鳴らし続けるし、吐き出す煙も赤、青、黄などさまざまに色が変わって、その日のK100の気分を色で表現したりする。

 増田プロデューサーは「色んな土地の人々との交歓があるので、視聴者も身近な親しみを持ってくれるでしょうし各地の名勝の紹介は子どもたちの知識を系統だって広げることになるでしょう。さらに機関車を九州から北海道まで運ぶとう、いわばバカバカしい事でも、男の子は意気に燃えればやるものだ、というロマンをぜひくみとってほしい」と言っている。

 又この番組を企画したCALの佐賀邦夫さんは「子供向け番組は数多いようですが、いわゆる怪獣エージは小学三年生止まり。さらに乱作であきたのか、上限が下がりつつあります。小学上級生から中学生にかけては対象番組が欠落しているので、このあたりの救済もねらいたい」と言っている。

 なお撮影は各県警交通部の道路使用許可を得て行われているが、近頃はどこへ行っても交通渋滞が起きているので、繁華街のK100の自走はほとんどの場合禁じられてる。この時はトレーラーに積んで自走しているように見せかけるなど苦心の撮影を続けている。

 関東でのロケは神奈川県、東京都、千葉県、茨城県が予定されており、東京入りは5月初めごろ。
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