51話(最終回)
「進め!夕日のかなたへ −沖縄の巻−」


監督:青野 暉
脚本:田口 成光/青野 暉

主なゲスト
ハブセンター所長・・・北村 三郎
横山 太郎・・・猪谷 聡
太郎のお母さん・・・松風 はる美
横山 一徹(太郎の父)・・・山本 耕一


今K-100は、南国の花が咲き乱れる中を紋太と節子を乗せて、手紙をくれた最後の一人、横山太郎君の家へと向かっていた。

旅の終わりが近づき、2人の頭にはこれまでの旅の思い出が甦り感慨にふけっていた。
そこでこれからどうするつもりなのか?という節子の問いに紋太は答えを言う事ができない。
いつかはケー100と別れなければいけない時が来るしいつまでもこうしてる訳にもいかない事は解っているのだが決心が踏ん切りが付かないのだ。

しかしとりあえずゴールを目指して先に進もうという所で急にK-100が急停車。どうしたのかと調べてみると、タイヤに大きなマメが数個できているではないか!?
「無理もないわよ。日本を端から端、ざっと4万キロを走ってきたんですもの」
とりあえずマメにガーゼを当てて応急処置。痛がるK-100に、この状態じゃ2人も乗っていくのは無理かと心配する節子。
だが紋太は最後の1人、太郎君に会ったらゆっくり休ませるのでもう少しだけがんばってもらうと、K-100を説得し、K-100も汽笛を鳴らして応える。

その頃、太郎は村の子供にいじめられ泣きながら家のある離れ小島に帰ってきた。
太郎はこの島で親子3人自給自足の生活を送っており、変人扱いを受けていたのだが、変人の所にK-100が来るわけ無いと言う訳だ。
しかし「誰の世話にもならず、自分たちの力だけで生活する為に東京を捨ててこの島に来たんだ。きっと紋太さんという人もここの生活が気に入ってくれる」との父の言葉に気を取り直した太郎は急ぎK-100を迎えに走る。

一方K-100は多幸山ハブセンターでセンターの所長からハブの毒について
「噛まれたら2時間以内に血清を打たないと苦しんで死んでしまう」とうんちくを聞かされていた。
ぜひ降りて見物して行ってくれという誘いをハブが怖くて断り、道すがら太郎の家を教えて貰う。離れ小島でハブも出るから船がないと行けないと言われるも、K-100で行くので心配ないと余裕の紋太。

そんなこんなで浜辺に来るとK-100の汽笛を聞きつけた太郎が走り寄ってきた。
しかし太郎を狙うハブに気が付いたK-100は、紋太と節子を振り落として太郎に向かって爆進!
間一髪、ハブの攻撃から太郎君を守るがK-100のタイヤがハブに噛まれてしまった!

心配する太郎に、大丈夫と言う紋太だが、言ってるそばからK-100は震えて苦しみ、その場で回転を始めた!
「ハブの毒が廻って来たんだ!」と言う太郎に「そげん馬鹿な!」ととまどう紋太。

「でも、K-100はタイヤにマメが出来るくらい弱ってるのよ」と節子も、遠巻きに見ていることしかできない。
そうこうしている内にK-100はその場に倒れ込んでしまった。
近づいてタイヤに手を当てると熱い。「こりゃ凄い熱じゃ」とみんなで海の水をくんで冷やす事に。

そこに自転車で通りかかった石橋は、自分の未来の金づる、K-100が倒れているのを見て走り寄る。
「困るな〜、のんびりとお寝んねなんかしちゃって。もう少しなんだからガンバってもらわないと困るじゃないの」と小突くが反応がない。
それで異変に気が付いた石橋は、ハブに噛まれたと聞いて急ぎ血清と医者を呼びににハブセンターに走った。
「冗談じゃないよ、K-100が死んじまったら、こちとらおまんまの食い上げだ!」

倒れて動けないK-100を見守る紋太さんと節子、太郎。
太郎が、僕の家に来ようとしたからこんな事にと謝り、この少年が手紙をくれた太郎だと気が付く紋太。

君に責任はない、と紋太が言ってる所に石橋が医者を連れて戻ってきた!
聴診器をあて、まだ望みがあると言う医者に動物用のでかい注射を渡して早く血清を打ってくれと促す石橋。
「わしは本当は豚か牛が専門なんですけどね・・・汽車は初めてなもんで・・・ま、やってみましょう!」
と言いつつタイヤに血清を打って、釜に聴診器を当てた医者が言うことには・・・
「大丈夫、命はとりとめました」

それを聞いてホッとする一同。見る間にK-100も起きあがってきた。
無理しないようにと帰る医者を見送り、みんなで太郎の住む島に行く事にする。
石橋が漕ぎ、K-100に繋げられた小舟から節子と太郎が声援を送りその後を付いていく。K-100はみんなに見守られながらついに島に上陸した。

そして太郎の家に着き挨拶する紋太。
太郎がケー100がハブに噛まれた事を話したので一徹が心配したが、K-100の汽笛が話を遮るように響き渡り、それを察した紋太がなんでもなかったと誤魔化す。そして太郎の母からは節子の事を奥さんと間違われて、慌てて訂正する紋太だった。

そんなみんなが和んでいる間石橋は一人、一徹の絵を見て何やら思い出していた。
「あれ?この画はたしか・・・横山画伯!ハガキ1枚の大きさが30万という人だ、まさか・・・」
急ぎ本人に、3年前にふらりと東京からいなくなった横山画伯かと確認に行くがはぐらかされて誤魔化されてしまう。

どうにも納得できない石橋を放っておいて、一徹はここの暮らしをどう思うか紋太に聞いてみた。
紋太も素晴らしく憧れると答えた。
「長い旅をしてる間、時々、ふと考えた事があるんです。僕もいつかこんな生活をしてみたいと」
一徹にK-100と共に島を案内してもらう紋太。そこに節子とお母さんが島バナナを持って来てみんなで食べる事に。

そこで一徹は紋太に話を切りだした。
「ところで、紋太さんこれからどうなさるんですか?」
「K-100を少し休ませて、又K-100と旅を」
「しかし、紋太さんは鹿児島から北海道へ、そして沖縄まで来られて、一応旅の区切りはついた。まだK-100と一緒に暮らすんですか?」
その言葉に驚く紋太と節子。
よけいなお節介だったと謝る一徹に今度は節子が
「あたしもね、こういう島の生活にとっても憧れてるんです。でも・・・いざ全てを捨てて島に移ろうとする時、はたして東京、自分の今までの生活と別れる事ができるかどうか、自信がないんです」
「……」うなずく一徹。
「僕もそうとです。いつまでも一緒に暮らす事ができないと解っていながらK-100と別れた後、どげんなるかと思うと・・・」

そして、よく全てを捨てて島の生活に飛び込む事ができたと感心する節子に一徹は、正直怖かったがでも年を取れば取るほどやり直しがきかなくなる、今の内だという事で思い切って島に来たと言う。
「しかし、いつまでも元の生活にしがみついていたんではこんな素晴らしい人生は開けなかったというのも事実なんですよ。別れると言うこ事は確かにつらい事です。でも人生にはそれが必要な時があるんですよ」

それを3人の後ろで聞いていたK-100は、気づかれないよう静かにみんなから離れていった・・・

その頃石橋は「貸すという事にした方が、細く長く儲けられるかな?」と電卓叩いて今後のK-100を使った商売の仕方を考えていたが、誰も乗っていないK-100が走ってくるのを見つけ止めようとするが振り切られてしまう。

急ぎ「K-100が逃げた!」と紋太に伝える石橋、急いで後を追う紋太と節子の後を石橋も追おうとするが一徹に止められてしまった。

走るK-100は、必死で追う紋太と節子の呼びかけにも一向に止まる気配もない。
そしてついにK-100は、日も沈み始めた夕陽の海に突っ込んだ!急ぎ自分も海に入る紋太だがとても追いつけない。

夕陽に向かって進むK-100に向かって紋太は叫ぶ。
「ケ〜100〜、僕を置いてどこへ行くんじゃ〜〜!」
それに汽笛を鳴らして応えるK-100だが引き返す気配はない。ひたすら夕陽に向かって進むだけだ。
「待ってくれ〜K-100〜!僕を置いてどこへ行くんじゃ〜〜!」

そんな紋太に節子は言った。
「K-100は話を聞いてたのよ。紋太くんに新しい人生を見つけて欲しかったのよ。紋太くん、行かせてあげて」
まるで節子の言う事が聞こえていたかのようにK-100の汽笛が聞こえてくる。
「ね、紋太くん、ケー100だって新しい生活を始めたいのよ。解って」
紋太はもう何も言う事ができない。2人して夕陽に進むK-100を見つめるだけだ。
K-100は「別れの挨拶のように」又紋太さんに「心配するな」と言うのかはたまた「ガンバレ」とエールを送っているのか汽笛鳴らし続けている。
そして紋太はがっくり膝を折っていたが突然立ち上がり今までと違う、何か吹っ切ったような表情でK-100に向かって叫んだ。
「ケ〜100〜!」
その表情がストップモーションになりK-100の汽笛が響いて、
(おわり)


北海道のおじいさんとの再会を果たし、一度は旅の終わりを確信した紋太とK-100。
しかし北海道のK-100に届けられた大量のハガキによりその差出人を訪ねる旅を決意しました。
その差出人を訪ねる旅も最後の一人を迎え、1年間に及んだ紋太とケー100の旅も終わりを迎えます。
そしてK-100は、旅の終わりに踏ん切りをつけられない紋太の為に、自分だけで新たな旅に行ってしまいました。
紋太にも新たな旅立ちをしてもらう為に。


『1年間に渡りお互いに協力していろいろな困難を克服してきた紋太とK-100。その最終回は別れのドラマではなく旅立ちのドラマでした。』

全51話(約1年間)K-100は視聴者と共に旅を続け、その最終回も見事に幕を引きました。ケー100が今も語り継がれるのは番組自体の魅力も勿論ですがこの最終回あってのことでしょう。
とにかく今回は『ケー100』を観ていた、好きだったという人ほぼ全員が、「ストーリーは覚えてないけど最終回の夕陽に向かうK-100は覚えている」と言う程、あの夕陽に向かうK-100が美しく心に残る名最終回です。(あぁぁ!キャプチャー画像を掲載したい!)

今回ゲストの山本 耕一氏はどちらかと言えば小林 千登勢さんのご主人という方が通りがいいでしょうか?
劇中出てきた「島バナナ」ですが、ロケ地特定の鍵になるかと調べていたらやけに美味しそうなので食べたくなってしまいました。(でも高いんですね・・・平均1kgあたり約1,500円!

ハブセンター所長役の北村三郎氏は芸歴40年以上になる沖縄芝居では有名な方という事です。
(この情報はソーダ様から頂きました)


長旅の疲れのたまったK-100は前半マメを作ったり、ハブに噛まれて熱出したりとファンのツボを押さえた描写や、それを見る医者のこの台詞
「わしは本当は豚か牛が専門なんですけどね・・・汽車は初めてなもんで・・・ま、やってみましょう!」は『宇宙戦艦ヤマト』の佐渡先生ですね。

実は今回、最初観た時は「あれ?こんなだったっけ・・・」と少々期待はずれな感がありました。

出てないと思っていた石橋が出ていたりと、微妙に記憶と違ったからですが、決定的だったのは夕陽に向かうK-100がラストカットだと思っていたら紋太のUPだった事です。あまりにも余韻がなさ過ぎる・・・と感じたんですね。

石橋も番組中で改心するとか節子の事等、全体的に人間関係に決着も付いていないし、なんか未消化という感じで。

しかしストーリーを書く為に見直してみたら、自分が勘違いをしていた事に気が付きました。
そう、『走れ!ケー100』という番組はK-100のドラマでなく紋太のドラマなんです。
つまり今回は、K-100が紋太と別れる話でなく、紋太がK-100との別れを受け入れる話だという事です。

これから紋太はK-100の力を借りず自分で道を開かねばなりません。それは実生活においてK-100という架空の存在の力をあてにできない視聴者の姿なのです。

最終回のケー100のメッセージはこれに尽きると思います。そう考えると石橋や節子の事などはこれから紋太が一人で決着をつけていけばいい事で、これでよかったんだと思えます。紋太とK-100の人生はこれから始まったばかりなんですから。

ちなみにケー100終了の翌週から始まった新番組は石ノ森章太郎原作、スタジオ・ゼロ製作のアニメ『星の子チョビン』でした。

(2003.4/19up)


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