石橋正彦裏話
ペテン師石橋こと、杜沢泰文(現・杜澤たいぶん)様が掲示板に書いてくれている
裏話をお借りしている写真と共に再掲載しています。
 
石橋正彦裏話その15 投稿日:2008年  3月20日(木)20時50分56秒

桜の花の満開の時、人それぞれに出発を迎える。

真新しい学生服を誇らしげに着た小学生。
さようならと言いつつも、進級して行く中・高生達。
難関を突破して少しずつ大人の世界に入って行く大学生。
期待と希望に胸躍らせる新社会人。

桜の満開の下を皆キラキラと出発をして行く。

何も出発する事がなくなってしまった私は、そんな人達に囲まれると何時も気恥ずかしい思いに顔を伏せ、満開の桜を上目づかいに見てしまう。

昨日上野の美術館に行く途中、まだ固いつぼみの桜の木を見上げながら、またそんな季節が巡って来たのか・・・さて今年はどんな出発が私にあるのだろうか・・・

うん、そうだ今年はK-100のファンの皆さんと逢えるではないか!
私がお邪魔する上映会の頃はきっと満開の桜が見れるぞ!
今年は何時もとはちょっと違った気持ちで桜を見上げられるかもしれない。

第50話、撮影風景。

 K-100の撮影時の素晴しいスタッフことを書いておきます。
一般的に助監督には監督の直ぐ下のチーフ助監督(田中秀忠氏通称グラッツェ)その下にセカンド助監督(大内健二氏)サード助監督(佐藤保治氏)がいらっしゃいました。

「よーいスタート」でカチンコ(シーンナンバーやカットナンバーを書くボード)を叩きその後で役者は演技し始めます。そしてカットで又カチンコを叩きます。
このカチンコを叩くのがサード助監督(佐藤保治氏)の役目です。私は今までこんなに見事にカチンコを叩く人を見た事がありません。

 アップで人の顔を撮る時、視線(相手役の)を決めます。通常はセカンドの手を相手役に見立てて視線を決めます。監督の「よーい」で気持ちを入れ視線を決めるのですがその後、顔のまん前にカチンコが出てくるのです。
つまり視線が遮られ、又顔の直ぐ前で叩かれるので役者はそれで気持ちが萎えてしまう事がおきるのです。ところがです、この佐藤助監督のカチンコはそんな事が起きないのです。

写真手前右がサード助監督の佐藤保治さん
49話、子供達の声援を受け天龍蔵に入るケー100の準備中と思われます。

 カチンコにシーンナンバーなどを白墨(チョーク)で書くので叩くと白い粉散りますからあらかじめ叩いて、吹いて散らない様にして置くのです。
監督の「よーいスタート」でカチンコを顔前に出す前、佐藤氏は必ず「顔の前失礼」と言い、実に素早く叩いて引っ込めるのです。つまりカチンコで気持ちが途切れる暇もない程なのです。

 ある時他の人の撮影の時です。シーンは悲しいシーン。役者の方も涙を流してのアップの演技です。息を殺して見ている佐藤氏をふと見ると、なんと佐藤氏は役者の演技につられ涙を流さんばかりに顔をゆがめているではありませんか。役者さんがNGを出したのでもう1回。

「顔の前失礼」カチン!なんとその声も音も小さく、とても心情的にやっているのです。そしてまた役者につられ顔をゆがめ演技を見ているのです。
そうか、私の演技の時もこんな風にしていたんだ!私は無我夢中でやっていたのでスタッフの方がこんな風に自分のたずさわっている撮影に入れ込んでいるとは少しも知りませんでした。

 その後他の方の撮影の時、私はスタッフ方々の顔を改めて見てみると佐藤氏程ではありませんが、それぞれがそれぞれに真剣にドラマに入れ込んでいるのが分かりました。撮影後の飲み会の時のスタッフとはまるで違う人々がそこにいたのです。素晴しいスタッフの方々があのK-100を撮っていたんですよ。

杜澤たいぶん。