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「大爆発!会えるかおじいちゃんに・・・・ −夕張の巻−」


監督:枝川 弘
脚本:高橋 二三

主なゲスト
北川久作・・・笠 智衆
北川コウイチ・・・宮田 真


K-100は夕張を目の前に勇払平野(ゆうふつへいや)をひた走っていた。
平行して走っている機関車と汽笛を鳴らし合い爆進するK-100!

花に囲まれた平野で現在位置を確認する紋太、節子、隆。
隆と共に今までの長い道のりの原点、「夕張に住む、K-100の最初の運転手であるおじいさんに、K-100を見せる」を再確認する紋太。

その旅の苦労をたたえる節子だったが紋太は、
「旅行の道すがら、ケー100を応援してくれた日本中の人達のおかげなんじゃ」
そして、元々ケー100のルポが目的だったのに、途中出版社と喧嘩して、今では純粋に夕張に行くケー100を応援してくれていると、節子にも礼を言う。
「何もかも打算的な今の世の中に一文にもならない旅行に半年も人生を懸けてしまう、そんな紋太くんの気持ちに感激しちゃったの」

そこにタクシーでもはや隠れることもなく現れる嘉代とノブちゃん。
「紋太!終点の夕張を目の前にして、何をグズグズしちょるの」
早く夕張に行きおじいさんを乗せるようにせかす嘉代。そこでハタと隆が気が付いた。

おじいさんをタイヤの付いたK-100に乗せたらガッカリしてしまうだろうから走れる線路を探そうと。
嘉代とノブちゃんは夕張だから炭坑用の線路があるだろうと線路探しを引き受けタクシーで走っていく。節子は一足先におじいさんにK-100の到着を知らせる事にして同じタクシーに乗って行く。そして紋太と隆もK-100に乗り込みいざ出発!

しばらく走ると道路の真ん中で手を振りK-100を止める少年がいた。
その少年は久作の孫のコウイチで、おじいさんが寝たきりだから一週間前から今日来るか明日来るかとず〜っとK-100を待っていたと言う。そしてコウイチを乗せて出発したものの、K-100はなぜか道をはずれて勝手に閉鎖されている炭坑に向かってしまいどうにもならない。
おじいさんのうちを目の前にどうして違う方向に行きたがるのかわからないが、とにかくK-100の行きたいようにさせるしかないと紋太。

そしてK-100はとっくに廃坑になりさびれた街を突き抜け一つの炭坑へ。
するとそこから煙が出ているではないか!

どうやら炭坑に残っている石炭が自然発火したらしい。このまま放っておくとどんな大惨事になるかわからない、と言っていると隆が、
「そうじゃ、K-100はこれを知らせる為にここへ来たんじゃ!」
それに応えて汽笛を鳴らすK-100。それを聞き、とにかく通報しなくてはと一番近い駐在所へ。

その頃節子は、おじいさんこと北川久作のうちを探し出していたが、自分が紋太くんや隆くんよりも先に会うのは違うと家の前で引き返しケー100を迎えに行くことにしていた。

一方火災の起きてる炭坑では、出火元の縦穴でダイナマイトを爆発させて埋めるより鎮火方法が無いという事になっていた。しかしどうやって300メートル先の出火元にダイナマイトを運ぶかのか?煙の中を人が運んでは爆風で命が危ない、車に乗せて勝手に走らせ爆破するのが一番というが事態は一刻を争う、そんな車はどこにと考えてるとみんなの視線がK-100に集まった!
あわてふためく紋太!
「とんでもない!あのK-100はこのコウイチくんのおじいさんに見せるために、はるばる鹿児島からやって来たとです!ここまで来てダイナマイトを積んで自爆しろなんて冗談じゃなか!

その頃嘉代とノブちゃんは線路を見つけてはしゃいでいた。
「よかと〜、おじいさんがこのレールの上を颯爽と運転する姿が目に浮かぶようじゃ、早うみんなに知らせにゃ〜、ノブ、おいで!」
とタクシーに飛び乗り住宅地へ。そこでK-100を待っている節子に会い、ケー100は着いてるかと訪ねるがまだだという。
そこで節子がタクシーで探しに行き2人が残ってK-100を見張る事にする。

そしてK-100にダイナマイトが積み込まれている所にやって来る節子。事情を聞いて急いでおじいさんの所にと言うが実はK-100が頑としてこの場を動かないと言う。
「このあたりはK-100の生まれ故郷じゃ。K-100は久しぶりに戻った故郷(ふるさと)の火事を見て、身を捨てて犠牲になろうとしてるとです」
そうこう言ってる間に準備ができたので出してくれと駐在が言ってきた!
久作の所まで車を飛ばして往復約20分、なんとか20分待ってくれと説得して急ぎ節子とコウイチは久作の家へ!

久作の家に着きK-100が着いたと叫ぶコウイチくん。
「K-100、K-100が来たんか」と身を起こしつぶやく久作。
そして節子は急ぎ久作とK-100の元へ

しかし事態は切迫していた。
炭坑の中は煙が充満しもはや一刻も待てなくなっていた。躊躇している紋太をせかすかのようなK-100の汽笛が響く!
「おじいさんと会う事より、火を消す事の大事さを知ってるんじゃ」
そう隆に言われて、紋太も意を決してケー100に乗り込む。そして駐在からK-100が炭坑に入ったらすぐ飛び降りるように注意されていざ炭坑へ。その後ろ姿に隆くんが叫ぶ!
「K-100、さようなら、(それ応えるK-100の汽笛)さようなら、K-100」思わず隆は後を追うが皆に止められてしまう。
煙でもう先が見えない炭坑からはK-100の汽笛だけが聞こえて来る。

そしてむせかえりながら出てくる紋太。爆風を避けるため離れて炭坑を見守る紋太の脳裏に海上を走ったり(7話)、お百度踏んだり(11話)、レールの上を走ったり(18話)とK-100との思い出がよぎる。
(バックかかるはBGMは「いいじゃないか」のアレンジ!)

そこに節子が久作と共に現れるが、時すでに遅く思わず紋太はつぶやいた「遅かった・・・」
久作に駈け寄る隆!
「おじいさん、僕が鹿児島の末長隆です!」
「おお。あんたが、あの隆くんか」と応えた久作に隆は
「おじいさん、待っといてください!」と突然炭坑に向かって走り出した!
あわてて引き止める紋太や駐在達、その腕の中で隆は叫ぶ!
「おじいさんにK-100をみせるんじゃ!K-100、おじいさんが来たぞ、帰ってこい!」
それを聞いた紋太が「僕にまかせとけ!」と炭坑の中へ!

煙をかき分け奥へと進んでいく紋太。
隆と節子が「紋太さん」と叫ぶ。しかし時が来て、轟音と共に炭坑の入り口が吹っ飛び紋太のテンガロハットが落ちて来た。
それを見つめる隆の前に、ボロボロになった紋太がK-100の煙突だけを持って現れた。
思わず駈け寄る隆くん、みんな口々喜ぶが紋太の表情は暗い。
追いつく途中で爆発して気が付いたら目の前に煙突だけが落ちていたと言う事だった。
その煙突を持って久作にあやまる紋太。

「おじいさん、K-100をこげな姿にしてしもうて、本当に申し訳なかです。もう一日早く来れば、こげな事にはならなかったのに・・・」
しかし久作は
「ようやってくださった。あんたたちを見て、K-100がどんなに可愛がられて、どんなに大事にされてここまでやって来たのか、私にはよ〜くわかりまっす。長い間本当にご苦労さんでした。やぁ、ありがとう。」
そして紋太の持っている煙突をなでながら
「K-100との再会が、わしのたった一つの生き甲斐じゃったが、しかし今、わしはちっとも悲しいとは思わん。あいつは昔から正義感が強くて意地っ張りでの〜、正しいと思った事は、どこまでも貫いて行く。そんな奴だった。どんなつらい仕事でも進んでやっていきよった。寒い寒い雪の夜、さすがのあいつもたまりかねての〜、ピーポーピーポーと鳴きながら、それでもレールの上をず〜っと走っていきよったわ・・・隆くん。紋太さん。わたしゃ今K-100を、あいつらしい最後じゃったと、誇らしく思うとります」

と、そこに「ヒョロヒョロ」と聞こえてくるのはヨレヨレだが確かにK-100の汽笛!
「K-100じゃ!あいつがあの世からわしを呼んどる」
という久作にみんな聞こえたと言っていると、あのK-100のガッシュガッシュという音が聞こえてきた!
固唾を飲んで見守っていると、なんと炭坑の中からよろよろと出てきたのは、ボロボロになってはいるがK-100ではないか!

思わず駈け寄る隆!「お前生きちょったのか!」
紋太も「よう帰ってきたの〜」と涙顔。
最後に久作が「会いたかったぞ〜、会いたかった。わしは50年昔、お前を初めて運転した、ほら(敬礼の格好をして)北川久作じゃ」
それに応えてヒョロヒョロと汽笛を鳴らすケー100。
その汽笛を聞き、満足げに鹿児島から本当によく来たとボロボロのK-100の車体に頬をすりつけて喜ぶ久作だった。

そこに今さらに現れて「何やっとるんじゃ」と声をかける嘉代。隆の「紋太さんは今、ダイナマイトで死にかけたんじゃ」の一言にその場で失神してしまった。

そして青空の下、修理をされてすかり綺麗になったK-100が、嘉代が見つけてきたレールの上を走っていた。
制服姿の久作と紋太を乗せて、景気よく汽笛を鳴らし走るその雄姿に手を振る人の中に一人、涙ぐんでいる隆の姿があった。

夕張の青空の下を走るK-100の姿が、運転席の久作の顔がアップでストップモーションになって
(つづく)


さ〜て今回は涙なくしては観られない前半のクライマックス、おじいさんとの再会ですが、その前にK-100には重大な試練が待っていた!
この旅を通して自分の事よりも他人を優先して来た紋太。そして今回K-100も、おじいさんに会いたいという自分の気持ちよりも、自分を犠牲にしても炭坑の火事を消すという事を優先します。今の時代、このK-100や紋太の姿には自分も恥ずかしく思えてしまいます。
まったく、オンタイムで見て泣いてたくせになんで大人になるとすっかりすれてこうなってしまうのか・・・(反省)

劇中でも前回から節子の台詞にありました通り、ケー100全体としてのテーマは無償の行為だそうです。これはやはり昭和48年当時、高度成長期が終わり、その反動でインフレ、公害問題などが表面化した時代、損得優先になってしまった社会への警鐘だったのでしょうが、今でもまさにピッタリのテーマです。いや、むしろ今の方が酷い個人主義が蔓延していますから、人は進歩しないでむしろ後退してますね。

今回はまさにそのテーマの集大成のようなエピソードで、やはりさすがは当初最終回に予定されていた話だと唸らずにはいられません。ドラマ的にも冒頭ののどかな出だしから一転して炭坑の火事、そしてK-100の危機、おじいさんは間に合うのか?というタイムサスペンス、そして大団円と、もはや見事の一言です。全編クライマックスな制作側の情熱がひしひしと伝わってくる名作です。

しかし後の最終回とも合わせて考えてみますに、この回が予定通り本当に最終回でもやはりK-100は炭坑から生きて戻ってこられたのか?これは少々考えてしまいます。

久作おじいさんを演じた笠 智衆(りゅう ちしゅう)氏ですがあまりにも有名な日本を代表する役者さんです。松竹の小津安二郎監督の名作「東京物語」や寅さんシリーズの「御前様」等、知らない方はいないでしょう。もし昭和40年代生まれで映画やTVが好きという方で、知らないという方がいましたら少々反省した方がいいと思います。ちなみに1993年に88歳でお亡くなりになっております。

さて次回からケー100は新展開を迎えます。お楽しみに!

(2002.9/22up)


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