第26話
「めざすは沖縄出発進行! −夕張の巻−」
監督:青野 暉
脚本:田口 成光
主なゲスト
北川久作・・・笠 智衆
北川コウイチ・・・宮田 真
紋太さんのお父さん・・・木田三千雄
キンジョウテツオ(沖縄の少年)・・・紺野秀樹
夕張で、紋太とK-100は大勢の記者に囲まれて取材攻勢を受けていた。その取材を早々に切り上げ、皆でおじいさんを囲み乾杯をして祝っているその席上で、紋太がK-100をおじいさんにプレゼントしてこのまま夕張に置いていく事を提案。
もう旅は終わった事だし、このまま北海道にいる事がおじいさんとK-100には幸せじゃないかという訳だ。隆は渋るが嘉代はおおいに賛成し、K-100がダダをこねるといけないからと、翌朝K-100に気付かれないようこっそり出発する事にする。
翌朝、こっそり出発する紋太一行だが、隆はこっそりK-100を見ていて思わず近づこうとするが、ノブちゃんに止められて渋々みんなと帰る事にする。
嘉代は紋太と帰れるのが嬉しくて大はしゃぎ。節子は紋太にどうして別れる気になったのかを聞いてみると
「このまま、K-100と一緒にいるとお互いに離れられなくなるような気がするんじゃ」
そして久作は残されたK-100に乗り込み自分の幸せを噛みしめていた。
「なんだかわしだけがK-100のおかげで幸せになってしもうて、申し訳ないような気がすっぞ。もっと大勢の人にこの幸せを分けてあげたい気もするが、どうしてじゃろうかね〜」
そこに郵便局員がリヤカー一杯のK-100宛のハガキの束を配達にやって来た。
ハガキをK-100に積みながら郵便局員が「K-100は今度はどこに行くんじゃ?」と訪ねると、ず〜っとここにいると聞かされ「可哀想に、じゃぁ、K-100は置いてけぼりか」と言った途端、突然K-100が汽笛を鳴らして走り出し、そのままどこかへ行ってしまった!
苫小牧から東京行きのフェリー(しれとこ丸)の上で紋太一行が出航を待っていると、そこにK-100家出の電話が入り急ぎ紋太と隆は船を降り夕張へ!出航のドラが鳴っているのに降りて走っていく2人を見かけた節子とノブちゃんも後を追うが。嘉代だけがトイレに行っていた為間一髪で降りそびれ一人出航してしまった。しかしめげずに船員に港に戻すか最寄りの港で降ろしてくれと頼むが、これは東京直行だからと言われてなすすべがなかった。
久作の所に戻った紋太と隆はコウイチと手分けしてK-100の捜索にあたる。
途中、夕暮れを走る夕張線のSLの汽笛をK-100と間違えたりと、一晩中探してもK-100の行方はわからなかった。
翌朝、朝靄の煙る中をトボトボと3人は久作の所に戻ってきた。
そこで久作から、眠れずに昔の日記を読んでいたら50年前の今日がK-100に初めて会った日だと言われ紋太は、K-100はおじいさんと初めて会ったその場所にいると確信する。
そして又、紋太、隆、コウイチの3人は、今は廃墟となっている廃線やコンクリ建造物が昔の最盛期を忍ばせる廃坑の跡地へ!
そこで3人は声をかぎりに「K-100!」と叫ぶが、返事の代わりに何かがぶつかり壊れるような音が聞こえてきた!その方角へ紋太が駆けつけるとなんとK-100がコンクリの壁に向かって体当たりをしているではないか!
「K-100は死ぬ気なんじゃ・・・」
急ぎ駈け寄り壁とK-100の間に入りK-100を押さえつけて止める紋太!
「な、K-100。黙って置いていったのは悪かった。じゃどん僕の気持ちも分かってくれ。これ以上お前と一緒にいると僕は、駄目な男になってしまうような気がしたんじゃ。お前と一緒にいないと何もできんようになる自分が怖かったんじゃ」
それに応えて汽笛を鳴らすK-100。
その紋太とK-100の前にいきなり一人の少年(この少年の名前がなんとキンジョウテツオ!)を連れた紋太のお父さんの姿が!「紋太、早くK-100を手当してやらんか」
料理屋のような所で一同くつろぎながら紋太の父の話を聞く事に。
それによると、沖縄からこのキンジョウ少年が鹿児島まで紋太を訪ねてきたが、今は夕張にいると言うと北海道まで会いに行くと言うので一緒に来たという。キンジョウ少年は沖縄には鉄道が無く、誰も本物の汽車を見たことがない為夏休み一杯使い、自転車で沖縄一週して沖縄中の小学生からK-100に沖縄に来て欲しいという署名嘆願書を集めたので、それを渡すためにはるばる沖縄から来たというのだ。
しかし紋太はK-100はおじいさんの物だし、もう旅はしたくないと断る。
それを聞きガックリ肩を落とすキンジョウ少年。隆とコウイチはそれを聞き席を立った、それをチラっと見て紋太の父は静かに言う。
「紋太、鹿児島から夕張まで旅をしたからと言って、もう旅はしたくないなんて、偉そうな事言うもんじゃなか。たかだか隆くんの頼みを聞いて夕張まで来ただけじゃなか」
駆け戻ってきた隆とコウイチから久作が、機関車は走ってこそ幸せなので、改めて紋太さんに送る事にする、と言う。
それを聞いた紋太の父が、
「久作さんの言う通り、K-100は走ってるのが幸せなんじゃ。K-100はいいとしてお前はどうする?他人に言われて動く事は馬や羊にもできる。馬や羊はそれでも幸せかもしれんがな。まぁ、わしがとやかく言う事はあるまい。紋太、お前はお前の好きなようにする事じゃ」
紋太を見守る一同。そして意を決した紋太が形を改めて。
「父さん、僕は沖縄に行きます!」
すかさず「紋太、よ〜っく考えた方がよか。本当にいいのか」と念を押すお父さん。
しかし紋太は
「沖縄ばかりでなく、K-100を見たがっている子供達は大勢いるんじゃ。まだ回っていないところを方々行って、それから沖縄じゃ。僕は、僕の決めた旅を、誰の手も借りずに必ずやり遂げてみせる」
今まで人の為、他人を優先して旅をしてきた紋太が初めて自己主張した瞬間だった!
そして紋太はK-100と共に沖縄に向かって再出発をする。「さようなら」と手を振り見送る久作の目は涙にあふれていた。
その頃やっと夕張に着いた節子とノブちゃんは走っていくK-100を見つけて急ぎ後を追うことに。
しばらく走るとケK-100の前に隆とキンジョウ少年、お父さんが現れた。隆は食料を渡し、お父さんは餞別を渡すが自分だけの力でやり遂げるからと返そうとする紋太に
「じゃどん、これはお金と思わず、万一の時のお守りと思って持ってけ」
そう言われると受け取らざるをえない紋太。
「伊賀山紋太、行ってきます!」
と出発する紋太さん。来るときも通った勇払平野にさしかかり又してもSLの汽笛を聞く。
「SLも応援してくれちょる」と手を振る紋太さん。K-100も汽笛を鳴らす。
「夕張はゴールじゃなか。ゴールは沖縄じゃ!K-100、南の島に向かって出発進行!」
と画面に向かって指を指す紋太の雄姿がストップモーションになって
(つづく)
今回からケー100は沖縄までの新たなる旅立ちを迎えます。
その為かオープニングが青森、北海道ロケのカットと差し替えがあり、紋太の衣装も初期のGジャンになりました。
しかし今回のK-100は、前回のラストの青いK-100とはとても同じ物とは思えない色の濃い黒いケー100でした。色が濃いせいか所々煙の煤か車体のあちこちが白く汚れ妙に汚く見える車体でした。所々塗りむらがあり表面もあれているように見えたので、今週は壁にぶつかって壊れなくてはいけないので、前回のボロボロになったK-100を修繕しての使い回しなのではないかと思ってしまいましたがどうなんでしょうか?
ところで沖縄から来た少年の名前がキンジョウテツオという名前でしたが、この名前は脚本の田口成光氏の円谷プロでの先輩にあたり初期ウルトラシリーズの生みの親、メインライターとしても有名な金城哲夫氏の名前からとったと思われます。それにつきましては掲示板に関屋様から詳しい書き込みがあり、まったく同意見なのでここに引用させて頂きます。
脚本の田口成光さんは、『ウルトラセブン』クランクインの時期に、特撮班の助監督として円谷プロに入社したという経歴の持主。同プロの文芸部を支えた先輩=金城氏に対する、田口さんの限りない尊敬の念を感じました。
紋太の父役の木田三千雄氏ですが、芸術座をメインに軽演劇界で活躍。数々映画やTVドラマに出演し94年7月にお亡くなりになっています。
わたしは1話を見逃していますので今回初めてお父さん役を木田三千雄氏と確認しました。
子供番組では「ウルトラセブン」の「明日を探せ」の占い師、レインボーマンのM作戦編の松前源吉役が有名どころでしょう。
しかしこのケー100での芝居には目を見張る素晴らしい物があります。特に紋太に「本当にいいのか」と念を押す時の間、口調、しぐさのあまりの自然さにほれぼれしてしまいました。笠 智衆氏もそうなのですがこの人たちの口から出るのはもはや台詞でなくて言葉ですね。
キンジョウ少年役の紺野秀樹さんは、『レインボーマン』第18話〜19話の「若」役、『ウルトラマンA』最終回のタケシ役も印象的ですね。
今までは紋太は変わらないで旅先で会った人々が紋太やK-100に会って変わると言うのが基本パターンでしたが今回紋太も一皮むけて確実に成長しているようです。
以前青森編で勘違いしていたストーリーの紋太の成長っぷりはこのあたりが元だったみたいですね。
それでは次回(10/9深夜1時)間違えないようにお楽しみに!
(紺野秀樹さんの情報は関屋さまからいただきました。)
(2002.9/29up)
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