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「 機関車は櫓で行くギッチラコ−松前の巻−」


監督:青野 暉
脚本:田口 耕三

主なゲスト
コウタロウ(尺八の青年)・・・成川 哲夫
自動車修理工・・・渋谷 健一


K-100は沖縄に向かう為、松前半島の先端にある北海道最南端の岬、白神岬(しらかみみさき)を目指して走っていた。
「いよいよ北海道ともお別れじゃぞ!」と意気揚々の紋太。そこにどこからともなく尺八の音が聞こえてくる。
紋太がK-100を降りて音のする方向に草原の中を歩いていくと、尺八を吹く青年(コウタロウ)と会う。
話してみるとコウタロウは鹿児島まで行く途中という事なので意気投合する2人。気をよくした紋太は青年にK-100を紹介する。

「弟のような、兄貴のような、そして時々恋人のように僕をいたわってくれる、かわいいK-100じゃ」
するとそれを聞きコウタロウの態度が一変した!
「誰の世話にもならずに旅をしているなんておっきな口を叩いたくせに、実はちゃんと機械のやっかいになってるじゃないか!」
青年はひたすら文明の利器にたよらない旅を続ける方針なのだ。そこで紋太と口論になり喧嘩別れをしてしまう。

憤慨してK-100に乗りその場を離れようとする紋太だったが、どうにもK-1000が動いてくれない。
海越えの前に点検しておこうと自動車修理工場に持ち込むが、どうにも原因がわからないのでとりあえずとにかく油だけでも注してもらう事にした。

その頃ノブちゃんは、一人K-100のタイヤの跡を追っていた。そこでコウタロウと会いK-100の事で喧嘩になってしまう。
「こう見えても鹿児島に帰れば町で1,2を争う美人なんじゃから」
「ふ〜ん、鹿児島という所はよほど女が少ないと見えるな」
そのやりとりの中、コウタロウがK-100に会ったと聞き急ぎ引き返すノブちゃんだった。

さてK-100は自動車修理工場を出発。海岸線を走っていると前で手を振る上下バッチリ赤できめた節子と会う。
沖縄行きの話を聞くと、紋太とK-100を応援する節子だが心なしか寂しそうである。
そこに又も聞こえてくる尺八の音!これからコウタロウはイカダで津軽海峡を渡る為に尺八を吹いて心を静めていたという。
それを聞き、K-100とイカダの競争を写真に撮ってもらおう。と節子に言うが、節子にはもう仕事は終わったから。と断られてしまう。そうこうしている間に先にイカダに出発されたので急いで跡を追う紋太。
しかしそれを見送り勢いよく手を振る節子だが、その表情にはなんともいえない陰があった。

K-100はイカダに追いつき、「お先に」と追い越していくが、それでムキになったコウタロウが力任せに櫓を漕いだ為に海に落ちてしまう。

なんとコウタロウはカナヅチという事で救助の為に紋太は海に飛び込んだ!
青年は救助されて横になっていたが、親父の形見である大事な尺八がまだイカダなのでを思い出し、それを聞いた紋太は取りに行こうとK-100を向かわせようとするがまたしてもK-100動かなくなってしまっい、ただ海に浮かんでいるだけになってしまった。

その頃ノブちゃんは節子と再会。K-100が調子の悪いまま海峡横断に出発したと聞き、万一の事があったらと心配するノブちゃんだがそこで節子が東京に帰ると聞かされる。
「節子さんはK-100をお見限りなんですね!」
その言葉になんとも言えない微笑を返して歩き出す節子だった。

一方紋太は、海に潜りなんとかK-100を修理しようとしていた。
コウタロウは紋太の手作りで肝心な時に壊れてしまうK-100が、文明の利器とはほど遠いので好きになってきた、と呑気に笑い出していた。
それを聞き紋太は怒るがコウタロウから「海の上にいる時は船と思えばいい」というアドバイスをうけ、コウタロウのイカダに突いている櫓をK-100につけて漕いで行く事にする。

そして櫓をつけたK-100を紋太が漕いでいっるのに、なぜかコウタロウはくつろいでいた。
「風流だな〜、これが本当の旅ってもんだよ」
しかし、骨が折れてかなわん!」
そうこうしていると浅瀬に流されて座礁してしまう。海に飛び込みなんとかしようとする紋太はウニの山に飛び込み四苦八苦。

そんなK-100の有様を節子とノブちゃんは一緒に白神岬から双眼鏡で眺めていた。
「こんな有様じゃ海峡横断は無理ね」と言う節子。「こうなったらいつもの勘を働かせて、そうだわ!」とノブちゃんを促しその場から離れる。

K-100の上ではコウタロウが紋太に旅の動機を話していた。親父が死に、形見の尺八を見ていたら若いうちに何かしなくてはいけない気になり、とりあえず会社を辞めて稚内から鹿児島まで歩いてみる事にしたと言う。
「世の中には変わった人がいるもんじゃんの〜」
「おぬしも相当な変わりもんさ〜。こんなケッタイな機関車を、沖縄まで連れて行こうと言うんだから」
「お互い、似たもん同士と言う訳か」
と笑い会う2人。
と目の前に港が見えるが、そこは本州ではなく松前に戻ってしまったのだ。

海岸に着くとそこにはノブちゃんが待っていた。節子に言われて待っていたと言う。(節子の勘のなんと鋭い事か!)
なんと節子は修理の事も手配済みだと言うが、ここで紋太は節子が東京に帰る事を聞かせれ手紙を渡される。その内容は、東京で会った興行師のクラタ(17話参照)に写真を送る事で旅費を工面してもらっていたのに、写真を送るのをやめた為告訴されそうだから話しを付けに急ぎ東京に戻るという事だった。

それを読んでる時にK-100が勝手に動き出し、それを見て紋太は、節子がいなくなる事をK-1000が知っていて動かなくなっていたのだと思いつく。
「K-100、そうじゃろ!」と釜を叩くとK-100も応えて汽笛を鳴らした。
急ぎ駅まで節子を見送りに港町を駅まで汽笛を鳴らしながら走るK-100。その汽笛が駅のホームで電車に乗る節子の耳にも届いた。
しかしK-100が着いた時にはもう電車は走り出していた。その電車の窓から
「紋太くん、がんばるのよ!」
と手を振る節子、紋太も「節子さんもクラタに負けるなよ」と走って行く電車に向かい手を振り返す。K-100も汽笛を鳴らして見送るのだった。

心機一転、改めて海峡を渡ろうとK-100と共に奮起する紋太。コウタロウも、もう一度イカダで挑戦するという事で別れる事になった。いざ走っていくK-100の前に心配したノブちゃんが、工事中の青函トンネルを頼んで通らせてもらう事を提案。しかし門司で関門トンネルを通らせてもらえなかった事(5話参照)や、尺八青年に負けたくないと必死に食い下がり、止めるノブちゃんを振り切りは津軽海峡に突入する。

海の上でコウタロウのイカダと会い
「又落っこちるなよ」
「おぬしこそ、又故障するなよ」
と声を掛け合う2人。(バックに流れるボーカル版の「いいじゃないか」が凄くいい味出してます)
そして海上のK-100の雄姿がストップモーションになって
(つづく)


今回からケー100は沖縄までの折り返し第1回目です。今回の見所は尺八青年と紋太との軽妙な掛け合いです。
全体的に2人の会話の妙と、津軽海峡突破のドタバタと節子との別れ、という盛りだくさんな娯楽編です。
そしてついに「いいじゃないか」ボーカル版初登場!

津軽海峡でのイカダねたはこの折り返しだったのですね。記憶違いか九州から沖縄に行く時だったのかとちょっと不安になっていました。
しかし尺八青年の大らかさは、爽やかなのか我が儘なのかよくわかりませんが、海上での紋太がやたら行動的で張り合ってる感が出ていて面白かったです。節子との別れのシーンもベタベタしないで名シーンでした。ぜひこのままにならずに節子の復帰を望みます。
そう言えば今回節子はノブちゃんを「イモ娘」と言わないで「ノブちゃん」と言っていましたね。

しかし紋太のノブちゃんに対する態度は「なにもそこまで」というくらいあんまりですよね。ノブちゃんはおかみさんと一緒に降板かと思っていましたがそうでもないんでしょうか?

それにつけても紋太のこの台詞
「弟のような、兄貴のような、そして時々恋人のように僕をいたわってくれる、かわいいK-100じゃ」
前回「一緒にいたらお互いにダメになる」と一度は別れを決意したのと違うのかい!K-100にメロメロじゃないか、紋太さん!

今回もK-100は色が濃かったですが、個人的な予想では次の青野監督の回までこのままで、枝川監督の回から青に戻りそうな気はしているのですがどんなもんでしょうね?それとも今後この色で最終回までいくのでしょうか?

今回のゲストの成川哲夫氏は、知る人ぞ知るかの「スペクトルマン」(71年、フジテレビ)で主役のスペクトルマンに変身する蒲生譲二役と「噂の刑事 トミーとマツ」(79年,TBS)の東刑事役が有名でしょう。83年に芸能界を引退、国際空手道連盟「成道会」を興し師範として活躍中!との事です。
ちなみに成川氏演じる尺八青年は36話(福井編)にも再登場するようです。

後半は紋太さんにせっぱ詰まった旅の目的が無くなるためゲストの比重が高い娯楽編が多かったと思います。今後の展開をお楽しみに!

(2002.10/12up)


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