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「チャグチャグ機関車でお嫁入り −岩手の巻−」


監督:中野恵之
脚本:才賀 明

主なゲスト
タエ・・・川口恵子
ジロウ・・・門間利夫
タエとジロウの父・・・成瀬昌彦


K-100は今、岩手県北上川のほとりにいた。そこでK-100のパンクを修理している紋太。その脇で隆は川を見つめながら宮沢賢治の「雨にも負けず、風にも負けず」の詩を空で謳っていた。
そこに節子とノブちゃんがやって来る。早速K-100にいい仕事があると持ちかけるが隆に一喝されてしまう。隆は夏休みも終わるので明日には九州に帰らなくてはならずそ、の間1メートルでも北海道に近づきたいので寄り道している暇はない。
そう言い言い残してK-100に飛び乗り走っていく去っていく紋太と隆。

そしてK-100は盛岡市内を抜けて牛ともすれ違う程ののどかな田園地帯(滝沢村)へ。
「もうすぐ国立公園の八幡平(はちまんたい)じゃ。青森を越すといよいよ北海道まで一またぎじゃぞ」
と意気揚々の紋太だが、隆は北海道を目の前に帰らなくてはいけない自分が悔しくてたまらない。
突然パンパン!という音がしてK-100が急停車、パンクでもしたのかと慌てて調べるがそうではないらしい。
すると物陰からかんしゃく玉をパチンコで打っている少年(ジロウ)、それが又K-100の車体に当たり思わず蒸気を噴いて脇にいた紋太がやけどしてしまう。隆と紋太はジロウを見つけて捕まえるが、そこにジロウの姉(タエ)がやって来て、話している間にジロウはそのまま逃げてしまう。

そこでジロウの家まで姉をK-100で送っていく紋太、そこでは明日のタエ嫁入りにそなえて、家の馬であるロクスケにチャグチャグの飾りを着せたり花嫁衣装が届いたりと嬉しいにぎわいにあふれていた。
ジロウの母は小さい頃亡くなっており、姉が母親代わりだったので嫁いでいくのが寂しくて荒れているらしいのだ。
やけどの薬を塗って紋太がはでに叫んでいるその間に、ジロウは馬小屋でロクスケの飾りを全部はずして乗っていってしまった。

それに気づいて家から出てくる一同。
タエは「ジロウがこんなに悲しがるならお嫁に行くんじゃなかった」とまで言い出す始末。
すると突然K-100の汽笛が鳴った!今にも走り出しそうに煙を出して体を揺すっている。それに飛び乗りジロウの後を追う紋太と隆!

ロクスケを追跡するK-100。「こげなよけいな事をして、明日北海道へ行くのが遅うなる」と言う隆に紋太は−
「余計な事じゃなか、あの姉弟には大事な問題なんじゃ」
途中節子とノブちゃんも蹴散らしK-100はロクスケを追跡する。まこうとして川を渡るがK-100はびくともしないで付いてくる。
そして川を渡りきった所でロクスケは走らなくなり追いつかれてしまった。

ジロウと隆は向き合って張り合うが、お互いに一歩も引かない。紋太の「姉さんが悲しむから」という言葉にもジロウは一切耳を貸さない。そんなジロウを隆はあきれて紋太に帰ろうと促す。

「紋太さん、こんな弱虫に紋太さんの言葉なんか分かりゃあせん」
それを聞き、隆に突っかかるジロウ。でも隆は「姉さんが嫁に行くくらいですねるなんて弱虫だ」と言い放つ。
自分も姉さんも母さんもいないけど友達がいるしケー100もいるから寂しいなんて思った事はない!


そしてジロウは帰り道、ロクスケの上から
「あんねぇ!あんねぇの馬鹿野郎!早く嫁に行っちまえばいいんだ!あんねぇの馬鹿野郎」
と叫んでいた。
それを聞いた隆は「まだわかっとらん」と怒るが「あれでいいんじゃ」と隆を押さえる紋太だった。

ジロウの家に戻ったK-100とロクスケ、そしてジロウとタエも仲直り。そこに節子とノブちゃんが現れて記念撮影という事になるのだが、なぜかロクスケもK-100も暴れて言う事を聞かない。そしてK-100はロクスケに小便をしたのをキッカケに、ロクスケの脚に蒸気を吹きかけてしまう。

この脚では明日のタエの嫁入りに馬車を引いていくのは無理だ。そこで節子がK-100で馬車を引いて行く事を提案。
「花嫁を乗せて走るK-100、これはバッチリ画になるわよ」
それを聞いて断る紋太だが、ジロウや父親からも言われて隆も
「やろう、紋太さん。K-100だって罪滅ぼしができてきっと喜ぶよ」
「ようし、節子さんじゃなく、ロクスケの頼みならな!」
それを聞きガッシリ手と手を握り会う隆とジロウだった。

次に日、ちゃぐちゃぐの飾りを付けたK-100に引かれて行く花嫁衣装のタエの姿があった。

その姿を写真に納めようとする節子だがノブちゃんが邪魔でなかなか撮れない。そんな所にジロウのかんしゃく玉まで飛んできた。

「もう、イモ娘と一緒だと本当についてないわ!」
とノブちゃんを置いて行ってしまう節子。
そして帰りの荷物を持った隆がK-100とのお別れに駆けつけた!
「紋太さん、北海道までもうすぐじゃ、頼むよ!」
「OK!」

「さようなら〜、さようなら〜」と目の前を走って行くK-100にいつまでも手を振る隆。
K-100はよく晴れた青空の下、岩手山に向かって花嫁を引いて走っていく。
(つづく)


さて今回は岩手県、有名なチャグチャグ馬コに引っかけたエピソードです。
隆くんも夏休みが終わるので今回でお別れという事で風景の絶景さと相まって感慨深い話に仕上がっています。
そしてこの作品はケー100を1話からチーフ助監督として支えてきた中野恵之監督の監督デビュー作です。
中野監督は後半でもう2本の監督を担当しますがどこ探っても監督としてではなく助監督としての経歴しか見つけられませんでした。
しかしこういう全編ロケというような作品ではず〜っと現場を管理している助監督の仕事が重要なのでそういう意味でケー100を陰から支えてきた方ですね。

今回K-100の立ち寄った村は日本で一番大きい村の肩書きを持つ滝沢村だと思われます。
しかしいい所ですね、思わず行ってみたくなりましたが30年後の今もこのまんまの姿なのでしょうか?

ゲストの成瀬昌彦氏は「劇団青年座」の旗揚げメンバーの一人として古くから演劇界、映画界で活躍されていた方です。子供番組ではやはりTBS系の「ウルトラセブン」のプロテ星人や「帰ってきたウルトラマン」のナックル星人役が有名でしょうか。

さていよいよ次回は青森県!記憶が正しければ津軽海峡を前に登場人物達の思いの収束される前半のクライマックスです。お楽しみに!

(2002.8/25up)


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