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「おじいちゃんの軽便鉄道 −沖縄の巻−」


監督:枝川 弘
脚本:上原 正三

主なゲスト
コウキチ・・・梶 正昭
コウイチ(コウキチの兄)・・・石立 照男
マカベさん・・・仲嶺 真永
コウキチのおじいさん・・・藤原 釜足

医者・・・金城 哲夫


「僕のおじいちゃんは昔、沖縄を走っていた軽便鉄道の機関士でした。おじいちゃんは今、病気で寝たきりです。僕がK-100の話をすると、一度でいいから乗ってみたいと、口癖のように言い続けています。紋太さん、お願いです。僕のおじいちゃんの夢を叶えてあげてください。」

という手紙の差出人(コウキチ)を探してK-100は今糸満市の砂糖黍畑を走っていた。そこで節子と再会し写真を撮って貰っているとコウキチの兄(コウイチ)とバッタリ出会ってそのままコウキチの家へ。

K-100の来訪に喜ぶコウキチだが、おじいちゃんはもはや寝たきり同然だった。今は体力的にもK-100に乗るのは無理だと医者から言われてコウキチは紋太に、おじいちゃんが元気になるまで滞在していて欲しいと頼む。
その頼みに躊躇する紋太だが、コウイチからコウキチが作ったK-100のペーパークラフトを見せられて、「おじいちゃんはこのK-100をさわりながら軽便鉄道の話をするのが大好きなんです」と聞いては待たないわけにはいかなかった。

という訳でしばらくの間滞在することになった紋太。浜辺に置いたK-100をコウキチが子供達に説明しているのを遠巻きに見ていると。そこにいきなり現れた沖縄軽便鉄道愛好会会長のマカベさん。K-100の来島を機会にもう一度沖縄に軽便鉄道を復活させたいと言うが、その資金はと言うと古い地図に記された海賊キッドの莫大な財宝!?

なりゆきを船の陰から聞いていた石橋は「莫大な財宝」という言葉に俄然色めき立ち、コウイチとマカベの乗ったジープが帰る途中車を止めて、自分をK-100のマネージャーで話に感激したので海賊キッドの財宝を探すのを手伝うと自分を売り込む。

しかしK-100は全島の子供達が待っているのでこんな事に巻き込む訳にはいかないと断られるが、石橋はK-100を使えば財宝を短期間で見つける勝算があると言う。それを聞きその気になってくるコウイチとマカベ。
「その代わり見つかったら財宝の3分の一を頂きますよ」とダメ押しする石橋だった。

早速子供達を順番に乗せているK-100の所に「おじいさんが危篤だ!」と言ってコウキチと紋太を誘い出し、さすがに節子は疑ったが節子も言いくるめられておじいさんの元へ。その隙に石橋はK-100のライトに袋をかぶせ、マカベ等と共にいざ!海賊キッドの財宝があるという島に。

「ケー100、ザックザックと出発進行!」

その頃コウキチの家では嘘から出た真実、おじいさんがいよいよ危なくなっていた。
なるべく早く、次に目を覚ましたらK-100に乗せた方が良いという事になり紋太は一路K-100を取りに戻るが、K-100の姿はない。近くの子供から石橋が乗っていたと気が付いた紋太、おじいさんが元気な内にと急ぎ自分も島に渡る事に。

「あのペテン師め、もう許さん!」(何回許してないんだ紋太さん?)

一方、島では石橋がいよいよK-100に財宝を見つけて貰おうとK-100にお願いしていた。
「K-100、一生のお願いこの通り!海賊キッドの財宝をうまく探し当ててくれ。そうしたらお前の好きな上等な薪でもなんでも思いのままだ。僕の愛するK-100。(ライトにキスする石橋)いいね、解ったね、いつものように暴れたりするんじゃないよ」

と袋をはずした途端、汽笛を鳴らして石橋を追いかけるK-100!あわてふためいて逃げる石橋だがふとK-100の止まった正面に金属の物体を見つける。
これが財宝の隠し場所の目印だろうという事で「さすがK-100」と感心するマカベ。
深く埋まっているらしいのでK-100に引っ張り出して貰う事にするがどうにもK-100は動かない。ライトを目隠しして石橋が運転しているのに動かない。石橋がK-100を降りてタイヤを蹴飛ばし、ようやく動き出した(?)K-100に合わせてみんなでひもを引っ張りやっと抜けたと思ったその瞬間、

大爆発!
その音に島に着いたばかりの紋太が駆けつけると、足下にK-100の煙突が転がっており、K-100にはボロボロになった石橋が引っかかっていた。 どうやら不発弾を引き抜いてしまったらしい。
「どうして俺だけがこんな姿に、まるで栄養失調のターザンじゃないか・・・」
と嘆く石橋にK-100を壊した天罰だと言う紋太。
おじいさんが危篤だからとコウイチを促し、それを聞いた石橋は嘘が本当になってしまったのでビックリ。
「先輩!もう一度K-100に宝探しをさせてくださいよ」と哀願する石橋を一人置いてK-100は急ぎコウキチの家へと向かった。

やっとの事でコウキチの家に着いたK-100だが、その汽笛を聞いたおじいさんがなんと自分から起き出してきた!
コウキチに付き添われて軽便鉄道時代の制服を着て出てきたおじいさんに一同ビックリしているが、そんなみんなをよそにおじいさんはK-100に近づき手探りでK-100に触れる。
「機関車の臭いだ・・・」(おじいさんは戦争で目をやられていて目が見えないのだ)
紋太も「医者から見放された人間がK-100の汽笛で命を甦らすなんて信じられん」と驚くばかり、節子も奇跡だとしか言いようがない。

そしておじいさんとコウキチを乗せて走り出すK-100。風を受けて見えない目で当時の風景を思い起こすおじいさん。
紋太に「この辺は見渡す限り砂糖黍畑でしょう」と言うが、そこには道路には車が走り(車もまだ右側通行ですよ!)、金網の向こうには米軍の基地があり砂糖黍畑の面影すらない。しかし紋太は答えた。
「そう、そうです。見渡す限り砂糖黍畑じゃ」

そんな紋太の気遣いを気が付いているのかおじいさんは満足気だった。
そしてK-100は汽笛を鳴らして走り続ける。
一瞬気が遠くなったようなおじいさんを気遣い戻ろうとするがおじいさんは
「大丈夫、今度は嘉手納線を走ってみましょうか」と言うので紋太は言うがままに走り続ける。おじさんの脳裏にはありし日の沖縄の風景が「軽便鉄道節」の歌と共に甦っていた。

そして突然おじいさんは大事にしていたお守りをコウキチにやると手渡して紋太にお礼を言っていた。
「紋太さん、わしは満足じゃよ。もう思い残すことはない」
コウキチは無邪気に「K-100のおかげでおじいちゃんの病気も治ったもんね」と喜んでいる。

しかしいきなりK-100が汽笛を鳴らして急停車!
どうしたのかと思っている紋太さんの隣でおじいさんは動かなくなっていた。
そしてコウキチがお守りを開けると中からは石炭が出てきた。それを見てコウキチは宣言する。
「俺、大きくなったら機関士になる!」

後日、みんなでコウキチを励まして沖縄縦断鉄道とか新幹線で九州から北海道まで縦断とかシベリア鉄道とか何の機関士に成りたいのかと聞くとコウキチは空を見て答えた。
「銀河特急便!」

そしてコウキチ手作りのペーパークラフト銀河特急便『うるま号』(うるまは沖縄の古い呼び名)を持ってきた。
「原子力かなんかで走るの?この特急」という節子の問いにコウキチはキッパリ答える「石炭」と。
『うるま号』にはおじいさんから貰ったお守りの石炭が積まれていた。

「じゃ、発車させるよ!銀河特急便出発!」

と模型に風船をつけて空に飛ばすコウキチ。
飛んで行く『うるま号』を追いかけて走るコウキチ、節子、紋太、その脇で汽笛を鳴らすK-100。
空を漂う『うるま号』がストップモーションになって
(つづく)


さて今回は、北海道の久作おじいさんの沖縄版の様なコウキチ君のおじいさんとのはかない交流がつづられた名編です。
と書くのは簡単ですが、しかし今回のエピソードにはそんな簡単なくくりでは済ませられない価値が秘められています。

まずはなんと医者役で出演されていた故・金城哲夫氏です。
金城氏26話前回登場のキンジョウテツオ君の名前の由来になったと思われますが、まさかご本人が出演されているとは思いませんでした。

氏の功績はここで書ききれませんし、もっと詳しいサイトがあるでしょうからここでは円谷プロの文芸部員としてウルトラシリーズ、ひいてはウルトラマンの産みの親とだけ書いておきますが、これだけ書いておけば充分でしょう。
このK-100出演の翌年開催の沖縄海洋博覧会にたずさわり、その翌年の昭和51年にお亡くなりになっていますので今回の映像はそういう意味でも貴重な記録です。

そして今回脚本初参加の上原 正三氏
氏は金城氏と共に最初のウルトラシリーズの基礎を作りあげた言わば盟友で、金城氏が円谷プロを離れた後「帰ってきたウルトラマン」のメインライターを努めその後円谷プロを離れ他局やアニメの仕事もするようになり東映の戦隊シリーズ宇宙刑事シリーズ等、子供番組において常に先頭を走ってきた方です。

そして金城、上原両氏共に沖縄出身という事もあり前回のお祭り的な内容とは対照的に、当時ですら覚えている人の少なくなっていた(ケー100の一遍だからとも言えますが)沖縄軽便鉄道を取り上げ、そしてそのケー100的な世界観を崩さず沖縄の基地の町としての現実を見せつける視点にはある意味驚嘆を覚えます。
(おじいさんが病気で目が見えないのではなく戦争で目が見えなくなっている所もポイントです)

今回の脚本は丁度上原氏が他局の仕事を始めるターニングポイントの時期の作品でいろんな意味で円谷プロ、TBSとの決別(と書くと響きが悪いですが)的な作品となります。
それを踏まえて今回のエピソードはゲストとして金城氏を配置されているというだけで色々感慨深い物がありますし、この事だけとってもケー100の一遍としてだけでなく日本の子供番組史的にも貴重な一遍です。(粋な事するじゃないか、TBS!プロデューサーかな?)

しかし以上の事もあくまでも裏の話、スタッフ間のイベント的な物ですが今回のエピソードで一番光っているのはコウキチ君の夢、「銀河特急便」これに尽きます。
普通なら「将来機関士に成る!」だけで充分であろうはずなのによりにもよって「銀河特急便」の機関士です!
これにはまいってしまいました、とにかくうだうだ補足は必要ないでしょう。

これが子供番組のメッセージというものですよ!

さてコウキチのおじいさん役の藤原 釜足氏(今回のオープニングテロップの鎌足は誤植)は黒沢映画の常連だった映画界、演劇界の大ベテランです。
1985年、享年80歳でお亡くなりになっております。

今回劇中に出てきたK-100のペーパークラフトは銀河特急「うるま号」と合わせて素晴らしい出来でしたが、いったい誰が作ったのでしょう?(やはり美術スタッフですかね?)

演出的にはおじいさんの命が随所にポインセチアの花として表現されていたのも美しく印象深いです。
今回軽便鉄道を検索で調べてみて、なんだかタイムリーだと思ったのはノスタルジアでなく、今現在も公害や渋滞問題の現実的な解決策として沖縄に鉄道をという運動は盛り上がっているようです。今こそK-100は沖縄を走るべきでは(笑

雑学的ですが町中を走るK-100の映像から当時の沖縄がまだ右側通行だった事が解ります。いつから左になったのかと調べましたら昭和53年7月30日から左側通行になり当時取材陣も頻繁に訪れたようです。

さて、泣いても笑ってもいよいよ次回は最終回。K-100の1年間の旅もいよいよ終わりを迎えます。
とにかく何をさておいても万難を排してお見逃し無く!

(2003.4/12up)


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