石橋正彦裏話
ペテン師石橋こと、杜沢泰文(現・杜澤たいぶん)様が掲示板に書いてくれている
裏話をお借りしている写真と共に再掲載しています。
 
石橋正彦裏話その10  投稿日:2008年 2月17日(日)17時08分5秒

 役者にとってその役者を「生かすも殺す」もやはり監督さんが重要な役割を持つ事は間違いありません。監督さんによって下手な役者も見違えるような演技をするものです。私は台本を貰ってから、その役に考えられるあらゆる設定を思い浮かべメモをし、自分の中に叩き込みます。

後は現場に行って相手役の方の出方や廻りの背景(セットも)などを考慮して後は身を任せます。だからテストの時はとんでもないテンションから出発することもあり(試す為)よく私を知らない監督さんなどは「それはいかにもオーバーでしょ」とか「もっと押さえて普通に!」とか言われて怒られる事がよくあります。
あくまでも自分では「テストだから色々試して演じてみているだけなんだけどなぁ」そんなに怒らなくたって・・・なんていじけてしまうのです。

ところがです。K100で初めて飛び出して来た私に一切制約を与えず、私の自由に演技させてくれた青野監督のお陰で、私は「石橋正彦」という役を演じ、そして膨らませて行く事が出来たのだと思うのです。

全くと言う位(私が不安になる位)青野監督はここをこうしろと!か、それは違うだろう!とか怒鳴ったり一切しない監督さんでした。不安な思いで撮影に入った私にとってなんと救われた事でしょうか。

最終回演出中の青野監督

 ある撮影の時、私が本番で例の長台詞をしゃべりまくって終ると「カット」の青野監督の声。カメラの方を見るとカメラマンの「内山五郎」さんと「青野監督」が後ろを向いているんです。芝居の後、監督とカメラマンに後ろを向かれる位、恐怖な事はありません!
「やば!変な芝居したから、怒られる!!」すると内山カメラマンが
「すいませんもう1回お願いします」って言うんです。
「(やば!やっぱり)なんか、俺また変な事言いましたか?」
よく見ると青野監督が後ろ向きのまま肩を震わせているんです。
「いや違うんだ。悪い悪い、こっちの問題なんだ」と内山カメラマン。
実は私が余りに熱を入れて演じていたので「内山カメラマン」が撮影中に噴いて(笑う)しまったのだそうです。それで二人とも後ろを向いて笑っていたんです。
「・・・えーと、僕は今のままで良いんでしょうか・・・?」
「良いんだよ・・・はい、じゃもう一回ね」と青野監督。
・・・青野監督!内山カメラマン!頼みますよ、脅かさないで下さいよ!俺、皆が思っているより気が小さいんだから・・・

49話のさとうきび畑にて

 私の大好きな役者さんのひとり、大先輩「高品 格」さんとの共演(第40話)も思いで深い撮影でした。日活映画黄金時代、悪役専門にやっておられた方ですが、見事に山の上の学校の教頭先生を演じてられていました。

撮影の合間また私の例の癖が出て、日活時代のこと等、根掘り葉掘りお聞きしました。すると戦争に行った事から(中国)日活のスターさんの事やらそれは沢山話して頂きました。
今回の教頭先生の役についてお聞きすると
「やっとこういう役をやらせて貰える様になって自分としては嬉しいんだよ」
と本当に嬉しそうに仰っていました。(高品先輩本当に有難うございました。合掌)

山の上の分校の生徒は子役以外全て本物の生徒の子供達で、それはそれは皆純朴な、私の子供の頃を彷彿とさせる?子供達でした。高品先輩との競演、分校の子供達、正彦も心洗われる撮影でした。

 青野監督もその子供達にいたく感激されていて、沖縄の撮影の時に「さとうきび」をわざわざ分校に送られていたのを覚えています。(本当に心優しき監督です)

あの分校の子供達にとっては変えがたい思い出になっている事でしょう。
そして今、DVDを見せてあげたらどんなに喜ぶことでしょうか・・・

杜澤たいぶん。