29話「機関車は名探偵 −秋田の巻−」


監督:枝川 弘
脚本:高橋 二三

主なゲスト
スリの兄貴分・・・玉川 良一


K-100は米所、秋田県の黄金色の穂が垂れた田園地帯を走っていた。
「まるで稲穂の海を走っているようじゃ!」
そして国鉄「男鹿(おが)」駅前に駐車中、2人組のスリが現れ逃げる時にすったサイフをK-100に投げ込み、スリの濡れ衣を着せられてしまう。
あわや警察にという所でノブちゃんが現れて救われる紋太。
「私の未来の夫に何をするとですか!」

そしてノブちゃんのおかげかK-100は無事男鹿半島の寒風山(かんぷうざん)を走っていた。
丁度同じ頃、その寒風山の展望台(売店やレストランもあるようなドライブインのような所)に5人の少年、少女が支配人に採ってきたキノコを売っていた。この子らの持ち込む物は観光客にも評判がいいとの事で二千円で取引成立。これで目標額の5万円に到達したので郵便局に貯金する為、今まで預けていた全額支配人から受け取る事にした。

しかしそれを見つめる怪しい目が二つ。先の駅前にいた2人組のスリである。
目標額に達成したお祝いに何か飲もうと(勿論自腹で)5人は自動販売機で物色中、この5万円をまんまとスリ取られてしまった!

スリ取った金を秘密の隠し場所(何もないすすきの原に「火の用心」の看板がありそこから大股で一歩の所の土が簡単に取れてその下にスリ取った物を入れておく缶があるという寸法!)に隠すスリの若手、金を入れて土を元に戻し悠々と去っていく。しかも隠す前に千円くすねるこそくな奴だ!

しかしそのすぐ後にK-100がそこにやって来て紋太の意志に反し、その隠し場所の上で止まり頑として動かなくなってしまった。
しょうがないからここで泊まるかと観念する紋太。それを見ていたスリの若手がどかすために飛び出そうとするが、兄貴に止められる。「ちょっと待て!慌てて飛び出しちゃ事故の元」

その夜、なまはげに扮したスリ2人は紋太を脅してどかそうとするが、観光サービスだと思った紋太は大喜びで作戦は失敗。

翌朝、K-100を出発させようとするがどうにも動かない。しかたなくK-100を置いて行こうとすると、そこにノブちゃんがやって来た。男鹿半島の先端の入道崎(にゅうどうざき)にいる子供から葉書をもらっているのでK-100を見せたいのだが、動かないので迎えに行くという紋太。(ちなみに寒風山から入道崎は直線距離で約20km)それを聞き留守番を買って出るノブちゃん。歩いていく紋太を「行ってらっしゃい♪」と幸せそうに見送るノブちゃん(なんか健気・・・)

それを陰から見ていたスリ達は、何とかノブちゃんをK-100から引き離してK-100をどかそうと企みノブちゃんの乙女心に訴える作戦に出た。
若手がノブちゃんに近づき「紋太からの伝言でおいしい物でも食べて休んでてくれ」と千円(ネコババした千円)を渡すとノブちゃんは何も疑わず感激してK-100を離れた。

さて、その隙にとK-100に乗り込み動かそうとするスリ2人。しかしK-100は汽笛で曲を鳴らしたり、カウルから水を出して(どうやったかは不明)2人を水浸しにしたりで撃退。「まるで生き物みたいで怖い」と言う若手の言葉に、だったら「生き物」として扱ってやると作戦変更。なんとK-100の前で石炭をちらつかせおびき寄せる。するとまんまとK-100は動きだし、作戦成功と思われたがいきなり2人を追いかけ回すK-100だった。

なんとかK-100を振り切った2人は「火の用心」の看板をずらし場所を勘違いさせようとするが、そんな作戦に引っかかるK-100ではなかった。

一方紋太は入道崎で葉書を出した「ナカガワ イチロウ」くんを見つけていた。その少年は先の5人組の一人だったのだ。5万円取られた話を聞き、なんの為に5万円も貯めていたのかという問いに、イチロウは出稼ぎに行ってる父親がここ数年正月にも帰らないので、正月が近づいたらその旅費を送り、今年は正月に必ず戻ってきてくれるように頼むつもりだったと言う
大晦日のなまはげ正月という年中行事を家族で迎え、幸せな年明けを迎えたいという事だった。それを聞きスリに怒り心頭な紋太。
「K-100のする事には必ず訳があるんじゃ、もしかすると・・・」ふとこの一件とK-100が動かない事には何か関係があるのではと思いあたりみんなでK-100の所へ!

そして一同バスに乗りK-100のいる寒風山へ!そこにふかし芋を持って呑気に現れたノブちゃんを紋太は一喝!訳がわからないまでもみんなを追いかけるノブちゃん。
その頃スリはK-100にダイナマイトを仕掛けていた。これで木っ端微塵になったら地下の金も木っ端微塵だが持ち出せなければ同じと強硬手段に出た訳だ。しかし導火線に火を点けるとK-100はついにその場を離れた。

その隙に金を掘り出す2人。そこに紋太とみんなが駆けつけてスリは捕まえるが、K-100が走ってる事に気が付き問いつめるとスリがダイナマイトを仕掛けた事を白状!
「K-100は自分だけが犠牲になろうとこの場を離れたんじゃ!」

ふと見ると子供達がK-100に駈け寄っているではないか!「引き返すんじゃ!」と叫ぶ紋太。それを見てスリの兄貴分が「俺の責任だ、俺が行く!」と紋太を振り切ってK-100に向かって走り出した!そして紋太とスリは子供を追い返し、間一髪K-100からダイナマイトも放り出して事態は一件落着。一段落してスリにこの金がどういうお金か説教する紋太。するとスリも
「俺もね、国に子供残して来てるんだよ。だけどね、今度の正月も子供の所に帰れそうもないや・・・」

そして警察に連行されるスリ2人組。ふと見るとK-100が子供達に見送られて出発していた。その脇では観光客相手になまはげが「良くねぇわらしはいねが〜」とすごんでいる。それを見ていたスリが一言。
「良くねぇわらしはいねぇが、良くねぇ大人がいましたとさ」

そしてK-100は寒風山を下っていく。沖縄を目指して・・・
(つづく)


さて今回のケー100ですが秋田県の男鹿半島寒風山、入道崎の雄大な景色をメインに、なまはげやらの地元ネタも押さえたなかなか娯楽作に仕上がっています。先週書きました個人的な不満、子供がからまないとかノブちゃんが無理矢理と言う点も改善されていて楽しめる一遍でした。

しかしK-100の色はやはり濃いままでしたね。こちらの方が本物のSLっぽいのですが、おそらく後半用の新造のK-100なのでしょう。それとも色を塗り替えただけですかね?

でも出稼ぎと言う言葉を凄く久しぶりに聞いた気がします。30年後の今の出稼ぎの現状って言うのはどうなっているのでしょうか?

しかし今回のノブちゃんは前話の扱いが酷かったのでどんなものかと思っていたら、ちょっとぶりっ子入ってるひたすら紋太さん一途なキャラ炸裂で、おかみさんと節子の呪縛から解かれてようやくキャラとして独り立ちか?という感じです。しかし石炭と薪に誘い出されてしまう機関車・・・玉川氏の「生き物として扱ってやる」というのはちょっと個人的に何かで使おうと思ってしまった迷台詞です!

ゲストの玉川 良一氏も台詞に交通標語を入れるというのも聞いていて楽しかったです。
ストーリー上では一言しか引用していませんがことあるごとに言っていました。
玉川氏はケー100の裏番組の「ダイヤモンド・アイ」(73年10月新番組)にも海藤警部の役で準レギュラーで出演しています。それと71年日本テレビの「おれは男だ!」森田健作扮する小林浩二の友人で銭湯の息子、田村の父親役でなんと石井富子さんと夫婦として出演していました。
ちなみに92年10月にお亡くなりになっております。

そうしてみますと「おれは男だ!」の浩二のおじいさん役は笠 智衆氏ですし、これは前から思っていたのですがケー100の出演者は松竹系の方が多いように思われます。(石井さんの旦那さんも「おれは男だ!」の脚本を書いている山根優一郎氏です)C.A.L自体が松竹系の会社だったでしょうか?

K-100に届いた手紙はどこから?と思われる方もいますでしょうがこれは26話に配達された大量の葉書の1枚と受け止めればいいと思います。多分出発前に紋太、隆、コウイチ、おじいさん、紋太のお父さん、キンジョウ少年でよってたかって吟味してたのでしょう。(憶測)

おそらく自分の中でのテンションが下がった為にパワーダウンに感じていたケー100ですが今回の話で安心しました。
そんなこんなで次回もお楽しみに!

(2002.10/25up)


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